愛の献血

最近、頭に血がのぼって怒ってばかりいる気がする。頭を冷やす意味で、少し血でも抜こうか、ということで献血をした。献血は初体験である。

献血赤十字血液センターの出張バスで行われた。まずは受付で用紙に住所、氏名、年齢、電話番号、血液型などを記入。献血量を200mlと400mlから選択。男は普通400mlということなので400mlを選んだ。その裏側はアンケートになっていて、エイズですか? 覚せい剤を使用したことがありますか? というような質問が並んでいる。すべて「いいえ」にチェックしておいた。ご安心ください。大丈夫です。(たぶん)

受付で献血を断られた人がいた。何故だろう、と思ってその人に聞いてみたら(疑問に思ったらすぐに聞いてしまう)、オランダに住んでいたからだそうだ。狂牛病が発生している国に半年以上すんでいた人の献血は受けないらしい。せっかくの善意が拒否されるなんて何か悲しいものがあるな。でも献血したら貰える景品を、献血しないで貰っていたから逆にラッキーかも。

バスに乗り込み、献血の前に血圧を測定。135。いつもよりも血圧が高い。献血を前にして少しどきどきしているようだ。
「はじめて(の献血)でどきどきしてるんでしょ?」
とおばさん(看護婦さん、いや、看護師さんか)が聞く。むー、ばれたか。緊張を表情には出さないようにしていたが、心臓のどきどきまではコントロールできなかったか。まだまだ修行が足りない。

次は血液型の検査。左側の腕を消毒し、注射針を射して血を採り、試験紙の上にたらして血液型のチェック。
「A型ですね?」
と言われたので、
「えー(しゃれのつもりだったが不発)。間違いなく典型的A型です」
と答えた。血液型を聞かれたとき、僕はA型の上に典型的とつけて答えることにしている。自分では典型的なA型(神経質、几帳面)だと思うのに、僕の周りの人は誰も信じてくれないからだ。口の悪い人には、
「絶対ウソ。A型だとしても、変形のA型でしょ?」
と言われる。何故だろう? こんなに普通なのに。滅多にいないくらい普通なのに。(滅多にいなかったら普通じゃないじゃん!と自分で突っ込み)

いよいよ、本番。缶ジュース(午後Tea250ml)が渡され、まずそれを一気に飲みほす。献血の前に水分を取るのは、献血の後、血液量を元に戻そうとして体が水分を必要とするからだろう。そしてベッドに横たわり、今度は右腕を消毒し、管の付いたぶっとい針がさされた。注射されるときいつも、このおばちゃん(看護師さん)、注射の腕は大丈夫なのか?と心配になる。もしとんでもなく不器用で、変なところをさされて血がぴゅーと出て止まらなくなったらどうしよう、と。注射にもその人のスキルを認定するものがあればいいのではないだろうか。例えば、注射五段とか。うまい人は、注射名人とか、注射四冠とか。あ、でも注射6級とかだったら、逃げたくなるな。世の中、知らない方が幸せなこともあるってことか。

注射は成功したようだ。透明な管は、中に血があふれて赤色に染まった。そして血がどくどくと管を流れているようだ。実に気持ちが悪い。

献血している間は腕が冷えないように湯たんぽやタオルをかけて腕を暖める。そういえば、薬を体に注入するのではなくて血を採るわけだから、注射ではないな。注射でなかったらなんていうんだろう、などとどうでもいいことを献血の間ずっと考え続ける。

長い。いつまでたっても終わらない。おばちゃん、間違って血を採りすぎていやしないか?とだんだん不安になる。
「あら? 間違えて1リットルも血を採っちゃった。ごめんなさい」
何てことを言われたらどうしよう。


しばらくして
「あと少しですよ」
と言われてほっとする。杞憂であったか(当たり前)。おばちゃん、疑ってごめんなさい。神経質な(変形の)A型なので・・・。

献血終了。一体どのくらいの時間がかかったのだろう。すごく長く感じられたけど、実は10分くらいだったのかな。わからない。時間を気にしてられるほど冷静ではなかったみたいだ。針を取り外し(この瞬間も血がぴゅ−と出そうでたまらなく怖い)、針を抜いたところにガーゼを当て包帯でぐるぐる巻きにして固定する。

再度血圧を測定。今度は115。献血前よりも低くなった。血液量が減って血流の圧力も減ったのか。350mlの缶ジュースよりも多い血を抜いたからな。もしこの段階で血圧が低くなりすぎていたら、その場で、
「緊急輸血します」
ということになるのだろうか。自分の血をもう一回戻せばいいのかな。献血に来ている人もいるから、血が足りなくなることはとりあえず無さそうだ。

愛の献血にご協力ありがとうございました、ということで、献血するといろいろと景品が貰える。今回、献血して手に入れた戦利品は、ジュース2本、油性ペン7色セット、ホカロン、愛の献血カレンダーなどであった。たぶん全部で1,000円もしないけど、嬉しい。根が貧乏性なのでつまらないものでも何でも貰うと嬉しいのだ。グリコのオマケが嬉しいのと同じだと思う。

献血はある回数に達するともれなく表彰されたり、記念品が貰えたりするようだ。最低10回献血すると何か記念品が貰えるらしい。でも献血は3ヶ月あいだを開けなければならないから、10回献血するには2年以上かかるのか。でも目指してみようかな。

ああ、何だかいいことした気分だ。いつも人に迷惑ばかりかけてるから、たまには人の役に立たないとね。血の気が減って気分はとても穏やかである。